2011年6月2日(木)



楽天、カード子会社売却で1000億円の損失計上 4〜6月

 楽天は2日、クレジットカード事業を再構築し、子会社への債権放棄や貸金債権の譲渡などで2011年4〜6月期の連結業績で
約1000億円の損失を計上すると発表した。再構築では楽天の子会社でクレジットカード事業の楽天KC(福岡市)から
「楽天カード」や関連事業を同じく楽天子会社の楽天クレジット(東京・品川)に8月1日付で承継させる。あわせて
楽天が持っていた楽天KCの普通株と第2種優先株をすべて大証2部上場で中堅ノンバンクのJトラストに約45億円で譲渡する。
 このほか楽天が楽天KCに対して持っていた劣後ローン債権100億円と、その他の貸金債権30億円の合計130億円を
債権放棄することもあわせて発表した。楽天KCに対する貸付金のうち債権放棄対象を除く370億円はJトラストに同額で売却する。
 一連の再構築に伴い楽天は「前年度と同等の営業利益等の水準を前提とした場合でも、個別・連結業績とも当期純損失となる
可能性がある」と明らかにした。2011年12月期通期の決算では3期ぶりに最終損益が赤字に転落する可能性が出てきた。
 金融事業の再編は、グループの貸金事業を縮小し、クレジットカード事業に注力するために実施する。楽天KCから事業を引き継ぐ
楽天クレジットに対し、楽天は約300億円の増資を引き受ける。再編後、楽天KCは楽天グループではなくなるため社名は
「KCカード」に変更する予定。楽天クレジットも一連の再編にあわせて社名は「楽天カード」に変える。
 楽天は2日の午後5時30分から都内で記者会見を開き説明する。〔日経QUICKニュース〕
(日本経済新聞 2011/6/2 17:19)
ttp://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C9381949EE2E0E291EA8DE2E0E2E4E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2

 

 

 

 

 

2011年6月2日
楽天株式会社
クレジットカード事業の再構築に向けた契約の締結について
(連結子会社間の会社分割、子会社の商号変更、子会社の異動(株式譲渡)及び子会社に対する債権放棄)
ttp://corp.rakuten.co.jp/ir/releases/pdf/2011/2011_06_02_JP.pdf

 

 



 


【コメント】
書き出すと止まらなくなる事例ですが。

 

楽天が保有するクレジット関連事業のうち、楽天は「楽天カード事業」のみに集中、他のクレジットカード関連事業からは撤退する、
という戦略は非常に的を射ていると思います。
楽天はインターネット・サービス関連事業への集中を加速しています。
2002年に読んだ日経ビジネスアソシエという雑誌に、「事業を拡大するためには金融がいる」
という三木谷社長のインタビューが載っていました。
その言葉通り、楽天はその後金融事業への進出を進めてきましたが、
ここに来て、特にシナジーが高い「楽天カード事業」にさらに事業分野を絞り込んでいく方針です。
昨年、海外への進出が短期間のうちに立て続けに起きましたので、マネジメント面について若干心配しておりましたが、
今また楽天も適切な事業展開を行っているなという印象です。

 

 



 


さて、この事例を財務面から見ていきますと、少し腑に落ちない点があります。

 

まず、楽天が現在楽天KCに対し有している劣後ローン債権及び劣後ローン以外の貸金債権(計130億円)を債権放棄するという点です。
なおかつ、楽天はこの会社分割の前に楽天クレジット株式会社に対し約300 億円の増資を行う予定です。
ここまでしておいて、楽天KC株式の売却価格は45億円です。
ちょっと意味不明な感じを受けます。
楽天の戦略自体は正しいのですが、債権放棄や会社分割や増資というスキームが非常にトリッキーに見えます。
楽天が債権放棄を行う分、当該株式売却額が上昇してもおかしくないと思いますが。
tricky です。本当に tricky です。


それと、本事例の影響の見通しですが、個別ベースでおおよそ800億円程度の損失、連結ベースでおおよそ1000億円程度の損失、
とのことです。しかしこれも何か変です。
これは財務面から見ると、親会社から子会社への貸付債権の放棄、及び親会社の子会社株式の売却損だけの話です。
個別と連結で損失額が変わるとは思えません。
本事例の損失はいずれの場合も親会社のみの話のはずです。
子会社では損失は出てきません。
本事例に関しては、個別と連結で損失額は同じになるはずです。
なぜ損失額が異なるのでしょうか。

それに、そもそも、個別ベースでおおよそ800億円程度の損失というのもおかしな気がします。
楽天KC株式の売却だけで、800億円も売却損が出るとは思えません。
800億円とか1000億円とかという数字が出てきている時点でおかしな気がします。
売却損が出るにしてもそこまで大きくはないでしょう。
800億円などという数字はありえない数字です。


会社分割のスキームの点、個別と連結で損失が異なる点、そして売却損の金額の点、いずれを取り上げても、
「少し話聞かせてもらえるかな」と言いたくなる事例だと思いました。