2011年5月11日(水)
[ニューヨーク 10日 ロイター] 米マイクロソフト(MS)は10日、インターネット電話のスカイプを
85億ドルで買収すると発表した。ウェブサービス分野を強化し、グーグルなど競合他社に対抗する。
MSの手がけた買収としては最高額。スカイプはMSの新部門となり、スカイプのベイツ最高経営責任者(CEO)が
統括責任者となる。
今後、企業顧客へのアピールとして、MSのメール・情報管理ソフト「アウトルック」などにスカイプの音声・テレビ電話機能が
追加される可能性があるほか、MSの家庭用ゲーム機「XBox(エックスボックス)」に同機能が搭載される可能性もある。
市場では買収の妥当性を疑問視する声が出ている。フォレスター・リサーチのアナリスト、アンドリュー・バーテルズ氏は
「投資としてまったく理にかなっていない。MSが投資に見合うほどの売り上げと利益をスカイプから得られるはずはない」
との見方を示した。
フォート・ピット・キャピタルのキム・コーイー・フォレスト氏は買収の背景にある論理に関心を示し、
「MSはスカイプがこの買収額に値する理由や、どのように株主に利益を還元するかについて説明する必要がある」と述べた。
これらの見方を反映して、ニューヨーク市場でMSの株価は0.62%安の25.67ドルで引けた。
スカイプは2003年に創設され、2005年にイーベイが31億ドルで買収したが、
イーベイは過半数の株式をプライベートエクィティのシルバーレイクやカナダの年金基金などの投資家グループに売却していた。
スカイプの新規株式公開(IPO)申請文書によると、2010年の売上高は8億6000万ドル、損益は700万ドルの赤字だった。
関係筋によると、シルバーレイクや3分の1を引き続き保有していたイーベイをなどは50億ドルの利益を得た。
MSのバルマーCEOは記者団に対し「当社は非常に野心的な企業だ」と語った。今回の案件ではアドバイザーを起用せず、
スカイプを保有する投資家グループに直接接触したことも明らかにした。
スカイプ側のアドバイザーはゴールドマン・サックスとJPモルガンが務めた。
(ロイター 2011年
05月 11日 10:40
JST)
ttp://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPJAPAN-21018820110511
ソフトウエア大手の米マイクロソフト(MS)によるインターネット電話サービスのスカイプ買収は、
苦境に立たされているMSのスマートフォン事業に活力を与えるかもしれないとアナリストは指摘している。
MSはスカイプを85億ドル(約6850億円)で買収する。この結果、MSの多くの製品の通信機能が増強されると
みられているが、とりわけ恩恵を受ける事業は独自の基本ソフト(OS)を搭載した高機能携帯電話(スマートフォン)端末を
展開するウィンドウズ・フォン事業かもしれない。
消費者の多くはアップルのiPhone(アイフォーン)やグーグルのOS、アンドロイド搭載端末に興味を持ち、
ウィンドウズ・フォンへの関心は薄い。しかしアナリストは、MSのスマートフォンにスカイプのテレビ電話機能を搭載し、
関連のプレミアムサービスを導入することによって、MSの立場がアップルやグーグルのそれに近づく可能性があるとみている。
経営コンサルタント会社オルトマン・ビランドリーのディレクター、スジト・ジャー氏は、
「MSはつい数カ月前までモバイル・インターネット時代で市場の隅に追いやられる恐れがあるとみられていた。
だがスカイプは一瞬にしてMSをモバイル分野の主要プレーヤーにできる」と指摘した。
MSはスカイプ統合を進めるにあたって、スマートフォンの売り上げを左右するモバイル通信サービス会社との関係を
緊張させないようにしなければならない。スカイプは過去に通信会社と提携したこともあったが、
通信会社とはおおむね競争的な関係を取ってきた。これはスカイプのサービスが従来型のビジネスや固定電話サービスに
取って代わるものであるためだ。
調査会社ガートナーのアナリスト、バーン・エリオット氏は、「既に緊張した関係がさらに緊張すると思う」と指摘している。
しかし、MSのスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)は、通信会社との協力を続けていく姿勢を強調した。
同CEOは、今回のスカイプ買収を大いに歓迎する見方を示したパートナー企業があると聞いていると述べたが、
その具体的な企業名は明らかにしなかった。同CEOは「通信会社とのパートナー関係は非常に重要だ」と語った。
ベライゾン・ワイヤレスとAT&Tの広報担当者はコメントを控えた。両社にはともにスカイプの事業から脅威を受ける
とみられる固定電話部門がある。
スカイプはMSのモバイル戦略で大きな役割を果たすとみられている。バルマーCEOはウィンドウズ・フォンが焦点になると
述べており、スカイプによるモバイル分野進出を称賛した。
MSがソフトウエア市場を独占し、MSのXbox(エックスボックス)が家庭用ゲーム機市場で高いシェアを持っているのとは対照的に、
ウィンドウズ・フォンの製品群は市場に大きな存在感を示せずにいる。MSは、ライバルのアップルやグーグルが
スマートフォンという重要な市場でリードを広げ、急成長を遂げるタブレット型端末市場でも確かな足掛かりを築いていくのを
ただ見ているだけだった。
調査会社のコムスコアによると、3月の米国の携帯端末向けOSのシェアは、グーグルが約35%で首位。
それに27%のリサーチ・イン・モーション、25.5%のアップルが続いた。MSは大きく水をあけられ、7.5%という結果だった。
新製品発売にもかかわらず、シェアは縮小した。
MSの端末はアプリケーションが少なすぎる上、通信会社からの売り込みも十分でない。使用感がユニークである点が
称賛されているものの、消費者はより人気の高いアップル製品やアンドロイド搭載端末に引き寄せられている。
しかし、テレビ電話サービスの人気はアップルの「フェイスタイム」といったサービスや、より高速な4Gネットワークの導入の
おかげで高まっている。スカイプはフェイスタイムと違い、アップル製品以外の電話や端末でも使えるという点が、
MSを有利にするとアナリストは指摘している。バルマーCEOはMS製品以外でのスカイプ使用に対するサポートを
続ける計画だと述べている。
レコン・アナリティクスのアナリスト、ロジャー・エントナー氏は、スカイプが幅広い端末で利用できることから、
ウィンドウズ・フォン以外のユーザーがスカイプの機能を試す機会が生まれるとし、
このため新たな顧客を引き寄せられる可能性があると述べた。
MSは微妙な立場にある。ウィンドウズ・フォンを販売する上で、AT&Tといった大手通信会社を頼りにしているからだ。
このためMSがスカイプを積極的に押し進め過ぎると、通信会社がMSに冷たい態度を取る可能性がある。
ガートナーのエリオット氏はMSのサービス「オフィス365」が既に通信会社の既存サービスと衝突していると指摘する。
しかし、大部分のアナリストはその影響が取るに足りないほどだとみている。ベライゾンなどの通信会社は既にスカイプと
独自に提携している。クレディ・スイスのアナリスト、ジョナサン・チャップリン氏は、MSは自らが提携している通信会社と
競合する分野ではスカイプのビジネスモデルを積極的に押し進めないだろうとみている。
(ウォール・ストリート・ジャーナル 2011年
5月 11日 10:22
JST)
ttp://jp.wsj.com/Business-Companies/Technology/node_234500
【コメント】
スカイプは電話なのですから、スマートフォン事業には全く寄与しないと思います。
電話をしたいのならスマートフォンでそのまま電話すればよいだけの話です。
インターネットという曖昧模糊とした世界を取り込み始めたばかりの米マイクロソフトにとって、
インターネット通信大手スカイプ・テクノロジーズの85億ドルでの買収は、理論上は効果が見込める。しかしマイクロソフトの
過去の合併・買収(M&A)の実績や高額な買収価格を考えると、実際には投資家の支持を得るのは難しそうだ。
マイクロソフトの発想は、スカイプの提供している音声、映像、メッセージングなどのサービスを「オフィス」の電子メールなどの
ソフトウエアや、自社の携帯機器用基本ソフト(OS)と統合するというものだ。
マイクロソフトは最近、「負け組」の自社製多機能電話(スマートフォン)向けOSのてこ入れを図るため、
フィンランドの携帯電話大手ノキアと提携した。スカイプは検索大手グーグル以外で社名が動詞として使われる
数少ないインターネット関連企業で、買収はアップルのテレビ電話「フェイスタイム」との競合で支援材料になるだろう。
マイクロソフトは企業が設けているインターネットなどの外部ネットワークとの「防火壁」の内側に入り込めることから、
スカイプにとっては事業の拡大につながりそうだ。
いいことずくめに見える。しかしマイクロソフトが2007年に実施したオンライン広告のアクアンティブの60億ドルでの
買収は、金額が同社の企業買収としては過去最大だったにもかかわらず、グーグルとの競争で目に見える成果は生まなかった。
ヤフーとのインターネット検索事業の一本化も同様だ。
しかしマイクロソフトのスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)が今回、スカイプ買収に付けた価格からすると、
企業価値の大幅な上昇が必要になる。しかもこの価格は競争入札で付いたのではなく、マイクロソフト側の言い値だ。
スカイプが昨年、新規株式公開(IPO)を申請したときには、同社の企業価値は50億ドルには届かないとみられていた。
マイクロソフトが今回示した価格はスカイプの売上高の10倍に相当する。グーグルの時価総額ですら売上高の5倍強だというのにだ。
買収価格はスカイプの昨年の営業利益の400倍強に相当する。
スカイプは現在の月間利用者数が1億7000万人で、急速に事業が拡大している。昨年の月間利用者数は1億4500万人と
前年比38%増加し、有料顧客数が19%増えた。しかし年10%の投資利益率を確保するためには、
税引き前の営業利益を今の40倍に増やさなければならない。
マイクロソフトの3月末時点のキャッシュと短期投資は500億ドルで、スカイプ買収の財務面での負担は重くない。
しかし株主に対して、どうのようにして今回の買収の元を取るかを示すのは難しい。同社は10日午前に、
時価総額が30億ドル近くも減少しており、投資家の頭の中にはスカイプ以外の動詞があるようだ。
(ニューヨーク 10日 ロイター BREAKINGVIEWS 2011年05月11日
7:28 pm JST)
ttp://blogs.jp.reuters.com/blog/2011/05/11/MSのスカイプ買収価格に疑問符/
【コメント】
>マイクロソフトの3月末時点のキャッシュと短期投資は500億ドルで、スカイプ買収の財務面での負担は重くない。
そんなことはないでしょう。
借入れや増資を行うことなく、手許現金で賄うことができているという意味では無理をした買収とまでは言えないかもしれませんが、
スカイプに大金を投じたことにより、「他の何かへの使い道」を選択しなかった、という重い意思決定を行ったことになります。
もし「他の何か」へ現金を投じていたらマイクロソフトはどう変わっていたのか、それをよく考える必要があります。
選択しなかった「他の何か」は経営の意思決定上今回犠牲になったわけです。
「他の何か」よりもマイクロソフトへ大きな寄与を実現できるよう、これからスカイプを経営していく必要があります。
マイケル・ポーター氏はこう言っています。
「戦略とは何をしないのか決めることだ」と。
マイクロソフトは「何をしなかったのか」、その意味をよく考える必要があるでしょう。
また、ハロルド・ジェニーン氏は自身の著書で、
私が最も満足感をもって回想できる企業の買収は、おそらく、”おこなわなかった買収”であろう、
と述べた後こう書いています。
「人生においてある道をとらないことは、別の道をとることと同じくらい重要性がある」と。
人生も経営も同じです。
マイクロソフトがある企業を買収しないことは、別の企業を買収することと同じくらい重要性があります。
スカイプを買収したということは、別の企業を買収しなかったということです。
別の企業を買収しなかったことの重要性をよく考える必要があるでしょう。
それと、昨日も書きましたが、スカイプ買収の財務面での負担は、これから重くなるのです。
買収の際のキャッシュアウトは一瞬です。手許現金の多いマイクロソフトはそのキャッシュアウトには耐えられます。
しかし、連結調整勘定の償却はこれからマイクロソフトの連結ベースの利益には重くのしかかってきます。
マイクロソフトは米国基準ですから、正確には、連結調整勘定の規則的な償却というより、
連結調整勘定の減損テストによる減損です。
どちらにせよ、連結ベースの利益の大きな圧迫要因です。
連結調整勘定はおそらく70億ドル以上。
何年後かは分かりませんが、極近い将来この70億ドルは全て減損処理しなければならないでしょう。
言い方を変えれば、マイクロソフトの連結ベースの利益は近い将来70億ドル以上吹き飛ぶということです。
高く買いすぎたことによる代償と言わざるを得ません。
マイクロソフトにとっては、一時的な手許現金の減少よりも、連結調整勘定の減損の方が負担が大きいと思います。
>投資家の頭の中にはスカイプ以外の動詞があるようだ。
投資家の頭の中にあるスカイプ(skype)以外の動詞というのはおそらく、
skip
でしょうか。
skip
には急いで立ち去るという意味があります。
投資家が株式から離れていくわけですから、ここでは投資家がマイクロソフト株式を売却することを言っているのでしょう。
株式の売却、英語ではエグジット(exit)とも表現します。
昨日の共同記者会見のストリーミング映像はこちらです↓。
Microsoft and Skype: Video
Gallery
ttp://www.microsoft.com/presspass/presskits/corpnews/videogallery.aspx?contentID=CorpNews0510_vid01
戦略面でも財務面でもこの買収はあまり評価できないというのが率直な感想です。
今回の買収は次の3つのいずれかではないでしょうか。
@mとbを間違えた。すなわち、million と billion を間違えた。買収額は 8.5 billion ではなく 8.5 million
の間違いである。
A通貨の単位を間違えた。買収額は8.5 billion ドルではなく、8.5 billion
円である。
Bマイクロソフトがついに狂った。
AとBはさすがに考えづらいですね。
@であって欲しいなと今でも思っています。
@〜Bのいずれでもないとすると、私はマイクロソフト株主とテニスをすることになるかもしれません。
【ロサンゼルス(米カルフォルニア州)】米俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー前カルフォルニア州知事と
マリア・シュライバー夫人は9日、別居を発表した。
25年間連れ添ってきたシュワルツェネッガー夫妻は発表文で、
「(夫婦)それぞれにとって、個人的にもキャリア的にも大きな変化の時期だった」と述べ、
双方の同意の下で別居を決めたと説明している。
今年1月まで7年間、州知事を務めたシュワルツェネッガー氏は現在、各地での講演のほか、エンターテインメント業界の
企画などに関わっている。シュライバー夫人は、故ケネディ大統領の親戚にあたり、NBCテレビのキャスターなどを務めた。
夫妻には4人の子供がいる。(AP通信)
(ウォール・ストリート・ジャーナル 2011年 5月 10日 16:04
JST)
ttp://jp.wsj.com/US/node_234037
【シュワルツェネッガー夫妻からの非公式コメント】
We'll be back.