2011年4月17日(日)
・・・と聞いたらあなたはどう思いますか?
「一部?それは偽札だろ。」と思うでしょう。
そりゃそうですよね。お札は全部が本物の場合、本物というわけです。
一部が本物のお札などありません。
本物のお札は全てが本物です。
少しでも本物とは異なる部分があるお札は間違いなく「偽札」と呼びます。
しかし、世の中には、「一部は正しいのだから本物と呼んでも問題はない。」と主張する人がいます。
もしその人が一部は本物のお札を手にした時どう思うでしょうか。
きっと「これは偽札だ」と言うでしょう。
一万円札の価値は、「一万円」か「ゼロ円」かのどちらかしかありません。
インクは本物と同じだから1000円分くらいの価値はあるだろう、とか、
模様は本物と同じだから3000円の価値はある、
などということはあり得ません。
本物以外は全て偽札です。
お札の価値というのは、
All or nothing
なのです。
まずは立派な財務情報開示の例を見てみましょう。
皆さんご存知のグーグルです。
2011年度第1四半期の決算です。
第1四半期は3月31日が期末日です。
わずか2週間で四半期決算の発表です。
早いですね。
(まあグーグルの決算発表が早いのは以前も書きましたようにグーグルのビジネスモデルがシンプルだからですが)
米Googleは米国時間2011年4月14日、同年第1四半期の決算を発表した。
売上高は85億7500万ドルで前年同期の67億7500万ドルから27%増加し、四半期ベースで過去最高を更新した。
会計原則(GAAP)ベースの純利益は22億9800万ドル(希薄化後の1株当たり利益は7.04ドル)で、
前年同期の19億5500万ドル(同6.06ドル)と比べ17.5%の増益となった。
株式報酬関連費用などを除いた非GAAPベースの場合、純利益は26億3800万ドル(希薄化後の1株当たり利益は8.08ドル)で、
前年同期の21億8100万ドル(同6.76ドル)を上回った。
提携パートナーに支払う手数料(TAC)を除いた実質売上高は65億4000万ドルで、同29%増加。
米メディア(New
York
Times)によると、実質売上高はアナリスト予想の63億2000万ドルを上回ったが、
非GAAPベースの1株当たり利益が8.11ドルと予想されていたことから、Googleの株価は時間外取引で一時5%以上下落した。
当期の業績を事業別に見ると、傘下のWebサイトによる売上高は58億8000万ドル(総売上高の69%)で前年同期比32%増。
「AdSense」プログラムを通じたパートナーサイトからの売上高は24億3000万ドル(同28%)で同19%増加した。
米国外の売上高は45億7000万ドルとなり、総売上高の53%を占めた。
傘下のWebサイトおよびパートナーサイトを含む広告のペイドクリック総数は前年同期と比べて約18%増加し、
クリック単価は約8%上昇した。
なお、当期のTACは20億4000万ドルで前年同期の17億1000万ドルから増加している。このほか研究開発費が12億2600万ドルと、
前年同期の8億1800万ドルから増加、販売マーケティング費も同69%増の10億2600万ドルとなり、
同社の営業費用は増加傾向にある(関連記事:Google、経営幹部もつなぎとめ、CFOなど4人の給与を引き上げへ)。
(ITPro
2011/04/15)
ttp://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110415/359471/
Google Announces First Quarter 2011 Results
ttp://investor.google.com/pdf/2011Q1_earnings_google.pdf
GAAPベースの純利益は22億9800万ドル、
非GAAPベースの純利益は26億3800万ドル、
とのことですが、正確に言うと、実はこれはおかしいのです。
「純利益」という時にはGAAPベースしかないのです。
というより、GAAPに従って「純利益」を計算していくのです。
非GAAPベース、すわなち、GAAPベースに従わない場合はそもそも「純利益」とは呼ばないのです。
グーグル発表の2つの数値のうち、22億9800万ドルという数字は、「純利益」としては正しい数値でしょう。
しかし、26億3800万ドルという数字は、「純利益」とは呼べず、
グーグル独自の財務指標というだけです。
投資家の投資判断に役立つと思ってグーグルが独自に計算して発表しているというだけです。
これは本来は、「非GAAPベース」といった枕詞をつけようが正確には「純利益」とは呼べないものです。
Google Announces First Quarter 2011 Results
4/12ページ
「About non-GAAP
financial measures」
(キャプチャー)
参謀訳
弊社連結財務諸表はGAAPに従って作成・開示されていますが、その補足として弊社では以下のような非GAAP財務指標を用いています:
非GAAP売上高、非GAAP営業利益、非GAAP純利益、非GAAP一株当たり純利益、そしてフリーキャッシュフローです。
この財務情報開示は、GAAPに従って作成・開示された財務情報とは完全に切り離して考えるものであるとか、
それらの代用となるものであるとかより優れたものである、といったことを意図しているわけではありません。
要するに、非GAAPの財務指標は、GAAPに従った財務諸表の補足(supplement)のために開示しているだけだ、ということです。
GAAPに従った財務諸表あっての非GAAP指標です。
GAAPに従った財務諸表なき非GAAP指標はあり得ません。
もしあったら騙してます。
非GAAP指標が supplement なら結構です。
しかし、deceive であるならいただけません。
グーグルはGAAPに従った財務諸表を開示しています。
ですから非GAAP指標の開示は役に立つだけです。
グーグルの場合は決して deceive
ではありません。
「これは非GAAPベースの純利益です。」
と言われた瞬間に、「それは純利益じゃないだろ。」と言いたくなる訳です。
「純利益」と言うからには当然GAAPベースです。
非GAAPベースの純利益などありません。
「一部本物のお札」と同じです。
非GAAPベースの純利益と言った時点で、それは「偽物」なのです。
一部がGAAPベースの利益などありません。
全てをGAAPに従って作成した財務諸表を「GAAPベースの財務諸表」と呼ぶのです。
一部はGAAPベース、一部は非GAAPベース、そんなものはありません。
少しでも非GAAPベースの部分があれば、それ全体を非GAAPベースと呼ぶのです。
お札と同じです。
GAAPベースの財務諸表は一つしかありません。
しかし、非GAAPベースの財務諸表は無限通りあります。
なぜなら、非GAAPベースであれば、どのように会計処理を行っても良いからです。
非GAAPベースの利益がどうのという企業があればその数値の正しさに黄色信号が灯ります。
非GAAPベースの利益という言葉が出てきたら、
Watchin' on a warning (警戒しながら注視する)
して下さい。
この利益はGAAPベースで・・・この利益は非GAAPベースで・・・
などと妙なことを言うでしょう。
ああこの企業は騙そうとしているんだなと思って下さい。
非GAAP指標はGAAPに従った財務諸表開示がない場合は「偽札」です。
万が一にも「偽札作り」に精を出す企業がなければいいがな、と一人の国民として思っております。
なぜかキン肉マンの一シーンを思い浮かべました。
「偽札作りに手を染める企業が日本に現れなければいいがな」
まあこのネプチューンマン(喧嘩男:けんかまん)は大口を叩く傾向にある点だけは注意ですが。
ニセモノが評価されるのは確かに納得がいきません
則巻千兵衛?
「会計は、コストをどこまで減らせるのか?」 高田直芳 著 (日本実業出版社)
Part9 「コンビニおにぎり」に隠された「会計マジック」を見破れ
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「買い手よ、注意せよ」
(スキャン)
あくまで厳正中立
(スキャン)
経営管理学が私にくれたもの 会計を学ぶことの大切さ
会計が私にくれたもの 企業の裏側を読む力
大好きだったけど まっすぐなだけでは生きていけないなんて
大好きだったけど 性善説とはさようなら
bye bye my naive way
of living
企業が嘘をついたら見抜いてあげるわ
私が覚えているのは、「こんにちわさび」なんてありました。
御坊コンツェルンの経営はどんな感じなのでしょうか。
財務諸表を見てみたいと思います。
御坊コンツェルンはもちろんコングロマリットですから、単体と連結両方ですが。
御坊コンツェルンに対してもコンサルティングを行ってみたいと思います。
ただ、「亀上の空論」では茶魔ちゃまは納得していただけないでしょうね、
などとくらだらない冗談を書いて今日は終わります。