2011年4月1日(金)


フランスの冒険飛行家はアンドレ・ジャピー。

私のデュポンでのあだ名はジャッピー。

 

まあ冗談ですが。

 

 

>ジャッピー【jappie】
>
>《ヤッピー(yuppie)をもじった造語》ニューヨークなどで、一流企業に勤務する仕事熱心な日本人。

 

 

 



ちなみに、ジャピー氏が乗っていた飛行機のエンジンはルノー製だったそうです。

ルノーは、かつては、航空機エンジンを製造していたようですが、
一応私がルノーのサイトを見る限りは現在は航空機エンジンは製造していないようです。

ルノーの沿革を見ますと、1914〜1918年に戦争関連で航空機エンジンを手がけていたようです。
また、1921〜1929年には多角化の一環で航空機エンジンを手がけていたようです。
1936年までは航空機エンジンを手がけていたのは間違いないのですが、
その後沿革には"aircraft engine"の文字は出てきません。
おそらく、途中で航空機エンジン部門は売却したのでしょう。
それがいつのことで売却相手が誰だったのかは分かりません。
ただ、沿革を見ますと、ルノーは1945年にフランス政府に国有化されています。
この際に航空機エンジン部門は売却されたのかもしれません。
もしくは、1985〜1986年にルノーは倒産の危機に直面していました。
当時の社長が"simplicity and diversification"戦略を始めました。
"simplicity and diversification"は何と訳しましょうか。
「選択と集中」でよいのでしょうか。
「質素と多様」が直訳になりますでしょうか。
「適切な事業売却と多角化」という訳はどうでしょうか。
「雌伏雄飛」と訳すと少し意味がずれるかもしれません。
この際に航空機エンジン部門は売却されたのかもしれません。
これ以上のことは分かりません。
機会があればカルロス・ゴーンに聞いてみたいと思います。

 


Renault Key Dates
ttp://www.renault.com/en/groupe/chiffres-cles/pages/dates-cles.aspx


ルノー 沿革
(キャプチャー)

 


 


ルノーのウィキペディアの解説を読んでいまして、気になる記述を見かけました。

 

Renault
ttp://en.wikipedia.org/wiki/Renault


>In 2007 Renault UK lost a US$2 million law suit against an independent distributor who had placed orders
>for 217 cars under a discount scheme intended for members of the British Airline Pilots Association
>- 3 were legitimate- because they had "made a profit of some sort on every vehicle".
>Two Renault employees were criticized for having "turned a blind eye" to the very large number of orders.

 

2007年に英国ルノーは系列外の販売代理店に対する訴訟で200万米ドル失ったとのことです。
British Airline (ブリティッシュ・エアライン)のパイロットに対する割引販売制度を悪用して販売代理店が偽の大量発注を
行った事に関する訴訟のようです。
詳しくは分かりませんが、代理店側の3人は全ての車両について幾分かは黒字であったために裁判では適法であると認められたそうです。
二人のルノー従業員はこの大量発注を見て見ぬ振りをしたとして批判されたそうです
(criticize には”有罪になる”という意味はないようです)。

 

 

 


Telling lies to a computer is still lying, rules High Court
Alert  PrintRetweetFacebookDiscount scheme deception
(The Register 26th November 2007 09:05 GMT)
ttp://www.theregister.co.uk/2007/11/26/lying_2_computer_still_lying/

 

こちらの記事を読みますと、英国ルノーが販売代理店を訴えたようです。
私は法律は専門ではないので間違っているかもしれませんが、日本でいうと「電子計算機使用詐欺」のような罪なのかもしれません。
販売代理店は割引購入の資格がない一般の購入者に対しても割引販売をしてしまったようです。
ここで販売代理店は自動車発注のコンピューターを悪用したようです。
そこで英国ルノーが販売代理店を訴えたようです。

英国ルノーは一応このコンピューター詐欺事件があったこと自体は裁判所で認めてもらっているのですが、
約70万ユーロの損失を訴えていたことを考えると全く納得の行かない判決のようです。
代理店側は無罪のようです。
理由は、詐欺発注だったとは言え、英国ルノーはこの自動車販売で利益が出ていたからだ、ということのようです。

裁判官の言い分は、詐欺発注だったのは確かだが、これらの自動車の生産販売で英国ルノーに損失が出たとは言えない、
従って、この訴訟は要件が不足しており原告の請求を却下する、ということのようです。


私は法律の専門家ではありませんから、判決の妥当性になどについては全く分かりませんが、
英国ルノーは販売代理店がコンピューターを悪用し不当に割引販売したこと自体を訴えているわけですから、
自動車販売が赤字だったか黒字だったかは関係ないのでは?という感じがします。
では赤字だったら販売代理店は有罪ということなのでしょうか。
仮に黒字だったとしても、割引販売した分黒字額が減っているわけですが。
英国ルノーは仮に割引販売しなかったら、つまり、仮に正規の料金で販売していたら得られたであろう金額(利益額)を
穴埋めするよう訴えているわけですから、黒字だったから詐欺発注でもOKというのは全く意味が分からないと思います。

 

 

 



会計や経営管理学の用語ではこのような本来なら得られたであろう利益のことを「機会損失」といいますが、
機会損失の計算は難しいと思います。
特に自動車の生産販売となりますと、生産工程における固定費の配賦をどのようにおこなうべきなのか、話は簡単ではありません。

詐欺発注であろうと正当な発注であろうと、生産で使用する材料や手順などは同じですから製造にかかった費用は
どの発注の場合も同じでしょうが、一台一台の製造コストは?となりますと、固定費をどう配賦すればよいか分かりません。
原価計算の難しさというのがここにあります。
実務上は1台1台の製造費用というのは厳密には計算はできないという言い方もできます。
なぜなら、固定費の配賦の際、その金額が配賦基準によって変わってしまうからです。
唯一絶対の配賦基準はありません。


また、生産面だけでなく、販売面でも機会損失の計算は難しいのです。
その顧客は割引販売だからこそルノーの自動車を買ったのかもしれません。
割引販売ではなく正規の料金だった場合はルノーの自動車は買わず、例えば日本車を買ったかもしれません。
「損して得取れ」ではありませんが、他社の自動車を買われるくらいなら、割引を行って販売した方がトータルでは
利益額は大きくなるとも考えられます。
割引料金だからこそ購入した顧客はどれくらいいたのか、
そして、もし正規の価格で販売していたらどのくらいの客が逃げたのか、
ということを厳密に計算するのは不可能と言っていいでしょう。

 

機会損失の計算は確かに難しい、
そしてだからこそ裁判所は英国ルノーが不当な割引販売で損失が出たとは言えない、と判断したのでしょう。
しかし、黒字だったから無罪というのも乱暴な気がします。
それを言うなら、損失は出ていない(利益額は減っていない)とも言えないわけです。
どのような計算をして裁判所は損失は出ていないと結論付けたのでしょうか。

 

 

 


>Thus it appeared that, far from suffering a loss as a result of the misrepresentations complained of,
>[Renault UK] was in fact better off."


参謀訳
したがって、訴えにある詐欺発注の結果損失を被ったどころか、英国ルノーは実のところかえって利益が増えたのだ。

 

 


この裁判の判決は例えて言うと、

ある人が大金持ちが運転する車に轢かれて瀕死の重傷を負ったが、大金持ちは多額の治療費と慰謝料を払った結果、
その人は事故に遭わなければ一生得られなかったほどのお金を手に入れることができた、
したがって、大金持ちは無罪、その人は事故に遭ってかえってよかったのだ、

と言っているのと同じだと思います。
たまたま運転手が大金持ちだからよかっただけでしょう。たまたま死ななかったからよかっただけでしょう。
本当なら治療費だけかもしれません。本当なら死んでいたかもしれません。
大金持ちは無罪になりませんし、事故に遭ってよかったともなりません。


まして、英国ルノーの場合は、「かえって利益が増えた」とも言い切れません。
結果オーライと言いましょうか、終わりよければ全てよしと言いましょうか、
英国ルノーの場合はそれらとも異なると思います。


英国はフランスが嫌いなのでしょうか。
機会があれば British Airline (ブリティッシュ・エアライン)に聞いてみたいと思います。

 


「クラウゼビッツの戦略思考 『戦争論』に学ぶリーダーシップと決断の本質」 (ダイヤモンド社)
The Boston Consulting Group 編著
ボストン・コンサルティング・グループ 訳

 


日本の読者へ

iページ

 

ii〜iiiページ

 


終章 戦略を超えて

241ページ



日本のビジネスマンへの示唆

249ページ



ボストン・コンサルティング・グループ戦略研究所

250〜251ページ



謝辞

252〜253ページ



訳者あとがき

254〜255ページ

 

256ページ

 



ボストン・コンサルティング・グループ
ttp://www.bcg.co.jp/

 

参考


経営別トピックス 企業再生(ターンアラウンド)
ttp://www.bcg.co.jp/impact_expertise/topics/turnaround.aspx


産業別トピックス 消費財/流通
ttp://www.bcg.co.jp/impact_expertise/industry/retail.aspx


機能別トピック 組織/人事
ttp://www.bcg.co.jp/impact_expertise/function/organization.aspx

 

 

 

 


何もない状態から始めて独力で道を切り拓いていかなくてもすむように、物事を秩序正しく整理し説明すること―
これが理論の役目である。
(前著 101ページ)