2011年3月26日(土)
【コメント】
有価証券には大きく分けて4つあります。
@売買目的有価証券
A満期保有目的債券
B子会社株式及び関連会社株式
Cその他有価証券
の4つです。
この記事は有価証券の中でも、「Cその他有価証券」についての解説記事です。
「Cその他有価証券」とは、上記@〜Bに当てはまらない有価証券のことです。
いわゆる「持ち合い株式」とか、付き合いで保有している取引先の株式などを指します。
一般の事業会社では例は少ないかもしれませんが、子会社株式や関連会社株式や持ち合い株式や取引先の株式というわけでもなく、
事業とは関係なく純粋に配当目的で長期間保有している株式なども「Cその他有価証券」に該当します。
さて、この「Cその他有価証券」ですが、貸借対照表上の価額は期末日の時価で評価することになります。
子会社株式及び関連会社株式は原則的には取得原価のままで表示します。時価評価はしません。
「Cその他有価証券」の評価方法は二種類あります。
a. 期末日の時価が帳簿価額よりも「50%未満」下落している場合
b. 期末日の時価が帳簿価額よりも「50%以上」下落している場合
の二種類です。
(その他有価証券評価差額金) 24 / (投資有価証券) 40
(繰延税金資産) 16
b. の場合は、有価証券の価額を時価に評価替えすると同時に、評価差額を有価証券評価損として処理します。
a.
の場合と異なり損益計算書に損失が計上されるということです。
記事の例で言いますと、仕訳はこうなります。
(投資有価証券評価損) 60 / (投資有価証券) 40
参考までに書きますと、
「その他有価証券評価差額金」は純資産の部に(この例の場合)マイナス表示されます。
「繰延税金資産」は(この場合)固定資産の部に表示されます。
「投資有価証券評価損」は特別損失の欄に計上されます。
それで、話はこれで終わらないわけですが。
日本航空のことを言いたいわけですが。
日本航空株式を保有している企業の会計処理についてですが。
日本航空株式を保有している企業は日本航空株式を「その他有価証券」に区分しているはずです。
日本航空株式を保有している企業は、日本航空株式を全額減損処理する必要があります。
仮に日本航空株式を100万円分保有している企業は次のように仕訳をする必要があります。
(投資有価証券評価損) 100万円 / (日本航空株式) 100万円
本来であるならば、今減損処理するのではなく、一年前(2010年3月期)に全額減損処理しなければならなかったはずです。
仮に一年前(2010年3月期)に全額減損処理しなかったとすると、その企業は、一年前、
日本航空株式の価値が「回復する見込みがある」と合理的な根拠をもって予測できていたことになります。
その合理的な根拠とは何でしょうか。
是非とも拝聴したいものです。
日本航空株式を保有している企業が、日本航空株式を全額減損処理しなければならない理由というのは何でしょうか。
一般的な株式であれば、減損処理しなければならない理由は、
「市場価格が著しく下落しなおかつ回復する見込みがあるとは認められないから」
となるでしょう。
日本航空株式もこの理由に当てはまるのですが、もっとはっきり言ってしまうと、
@1兆円を超える巨額の債務超過の状態である
A会社更生手続きに入っている
という二つの理由から、日本航空株式を保有している企業は日本航空株式を全額減損処理しなければならないのです。
日本航空の側から見ると、@とAの理由から、日本航空は「100%減資」をしなければなりません。
「100%減資」を行うということはその株式の価値はゼロになる(この世からその株式が完全に消えて無くなる)ということです。
その株式の価値はゼロでありなおかつ回復の見込みなど当然あるはずがありません。
日本航空は債務を返済できないから会社更生手続きに入ったのです。
債務を返済できるのであれば会社更生手続きになど入る必要はありません。
会社更生手続きに入って、裁判所の管理下の元、債務の減額をお願し事業の再生を試みるのです。
債務の減額をお願いしている時点でその企業の株式の価値は自動的にゼロなのです。
株式の価値がゼロになって始めて債務の価値が減少します。
これは株式会社と呼ばれるものの原理原則です。
日本航空は会社更生手続きに入っています。
これは率直に言えば「100%減資」を行うと言っているのと同じことなのです。
債務の減額をお願いしない会社更生手続きなどないように、「100%減資」を行わない会社更生手続きなどありません。
会社更生手続きに入った会社で「100%減資」を行わなかった事例は今までに一例もありません。
A会社更生手続きに入っている
というだけで実務的には十分なのですが、
日本航空は1兆円を超える巨額の債務超過の状態であることも特筆すべきなのは間違いありません。
なぜここまでの債務超過に陥ってしまったのか。
いくら不採算路線から撤退しようとも1円も減らない巨額の「管理不能固定費」が原因です。
日本航空の経営陣や従業員がどんなに努力をしても解決の見込みがまるで立たない巨額の「管理不能固定費」が
日本航空の前に立ちはだかっています。
この「管理不能固定費」は、好不況には全く関係なく生じ続け、経営陣や従業員の努力を全て吹き飛ばす凄まじい威力を持っています。
日本航空が「100%減資」を行わなければならない理由として、戦略的には、この「管理不能固定費」を解決する、が挙げられます。
日本航空が「100%減資」を行えばこの「管理不能固定費」は解決のメドが立ちます。
ただ誤解して欲しくないのは、決してこの「管理不能固定費」の削減そのものが目的なのではなく、
日本航空には立派に再生してもらいたいというのが国民の一番の願いだということです。
日本航空が「100%減資」を行うことなく会社更生手続きが終結するなどありえない話です。
会社更生手続きが終結するということは、日本航空の債務の一定額の返済が完了したということですが、
それは全て国民の税金を使って返済したということです。
「100%減資」を行うからこそ日本航空の債務は国民が引き受けようという話だったはずです。
「100%減資」を行うことなく債務だけ国民に押し付けるというのは話が違うと思います。
「100%減資」を行わず債務の返済を税金で行う場合、支払債務免除益という形で特別利益が計上されますが、
その程度の特別利益では焼け石に水です。
債務超過は解消しません。
ダイエーと同じ様に再倒産するだけです。
会社更生法の条文そのものには、”必ず「100%減資」を行わなければならない”、といったことは書かれていないのかもしれません。
しかし、今までの会社更生手続きの事例を見ても分かるように、会社更生手続きに当たり「100%減資」を行うのは
当たり前過ぎることだから書かれていないのではないでしょうか。
「100%減資」を行わずに債務(相手側から見れば債権)の減額に応じる債権者が一人でもいるでしょうか。
いるわけがありません。
会社更生法の条文にはそのようなことは書かれていないからといって「100%減資」を行わないのは筋が通りません。
「100%減資」を行わずに債務(相手側から見れば債権)の減額に応じる債権者などこの世に一人もいないことを前提に
会社更生法は書かれているのではないでしょうか。
もしそのような債権者がいるとすれば、それは経済活動の原理原則に反しています。
ボランティアや宗教の世界にはいるのかもしれませんが、ビジネスの世界にはそのような債権者は一人もいません。
「100%減資」を行わないのは国民をそのような経済活動の原理原則に反している存在だと見なしているとしか思えません。
条文には書かれていないからという理由で「100%減資」を行わないで済ますのは脱法的行為です。
仮に「100%減資」を行わずに会社更生手続きが終結するとすれば、それは更生計画自体に「100%減資」を行うことが
記載されていなかったということになります。
つまり、始めから国民を騙すつもりだった、ということです。
管財人もよくそんな計画を作成したものです。
国民を騙すことを前提とした更生計画を作成する管財人・・・
世も末なのか、それとも、世は昔からこうだったのか。
もし「100%減資」を行わず最後まで国民を騙すというのであれば、ああやっぱりそうだったか、という思いがあります。
会社更生手続きに入っても「100%減資」をしないことは違法ではないと言われればそれまでですが。
法には反していないかもしれませんが、経済活動の原理原則には明らかに反しています。
経済活動の原理原則に反しているということは常識に反しているということです。
「100%減資」を行わない場合は、日本航空は必ず再倒産します。
ダイエーが実例です。
今までに何度も書きましたように、ダイエーは昨年2010年9月30日(木)に再倒産しました。
産業再生機構を通して再生を試みた手前、ほとんど報道もされていませんが、これは明らかな再倒産です。
ダイエーの再倒産が明るみに出ますと日本航空の借金の棒引きもやりにくくなるという思惑もあるでしょう。
しかし、ダイエーが再倒産したのは事実です。
女子アナ総合研究所 第九章
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/ana/1282403632/
の>>387で、2010/10/01(金)にこう書いています。
>財務省には、来年度の予算編成で「二次破綻企業再生支援機構」の設立を検討することを具申します。
と。
日本航空の場合も必ずこうなります。
2015年ころに「二次破綻日本航空再生支援機構」を設立しなければならないでしょう。
もうダイエーと同じことを繰り返すのはやめましょう。
No more Daieis.
です。
何度でも何度でも、繰り返しお願い申し上げます。
日本航空は必ず「100%減資」を行っていただきたいと思います。