2010年12月19日(日)



HTB:黒字4億円 支援交付金が寄与−−4〜9月

 エイチ・アイ・エス(HIS)は17日発表した10年10月期決算で、子会社の大型リゾート施設
「ハウステンボス」(HTB、長崎県佐世保市)の10年4〜9月期単体決算の概要を明らかにした。
佐世保市が固定資産税相当額を「再生支援交付金」として交付する支援措置が寄与し、経常損益は4億2900万円の黒字と
92年の開業以来で初めて、黒字化を達成した。
 売上高は55億7000万円で、営業損益は1億1300万円の赤字だった。HTBに交付される
「再生支援交付金」は年間約8億7000万円だが、10年4〜9月期は半分の約4億3500万円を営業外収益に計上した。
 最終損益は明らかにしていないものの、数億円の黒字を確保したとみられる。
平林朗・HIS社長は「11年9月期に営業損益の黒字化を目指す」と述べた。
 HTBは今年、決算期を3月から9月に変更しており、4〜9月期の変則決算。
(毎日新聞 2010年12月18日 西部朝刊)
ttp://mainichi.jp/seibu/seikei/news/20101218ddp008020014000c.html

 

 



HTB黒字4億2900万円 10月期

 旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS、東京)が17日発表した2010年10月期連結決算で、傘下のリゾート施設、
ハウステンボス(長崎県佐世保市、HTB)の経常利益が4億2900万円に上った。
HTBは今回、決算期の変更で半年間の変則決算となったが、1992年の開業以来、初の黒字を達成した。
2011年10月期は営業黒字を目指すとしている。
 前年同期の半年間と比べたHTBの売上高は2・9%増の55億7千万円。本業の損益を示す営業損益は1億1300万円の赤字
だったが、前年同期の7億2千万円の赤字から大幅に改善。経常損益も赤字から黒字転換した。
 4月末からの入場料引き下げで入場者数が増加。営業面積も減らし、人件費や光熱費などの費用を約2割削減した。
営業黒字には届かなかったものの、HTBに佐世保市が交付する半年分の固定資産税相当額(4億円)が底上げし、経常黒字となった。
 HTBは22日に決算内容の詳細と、11年10月期の営業黒字を目指す経営計画を発表する。
経営計画では、各種イベントの実施や7月中旬に計画する長崎−上海航路の就航などで売上高130億円、経常利益8億円、
入場者数は10年度の約3割増の180万人を見込む。
 HISの10年10月期連結決算は、売上高が前期比7・1%増の3480億6500万円、
営業利益は同12・0%減の62億7800万円、純利益は同0・4%増の33億8400万円。
(西日本新聞朝刊 2010年12月18日 00:20)
ttp://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/216251

 

 

 



ハウステンボス経常黒字4億円 交付金効果 本業は赤字

 旅行会社エイチ・アイ・エス(HIS、東京)は17日、子会社のハウステンボス(HTB、長崎県佐世保市)の
4〜9月期決算が約4億3千万円の経常黒字だったと発表した。本業の力を示す営業損益は約1億1千万円の赤字が残った。
佐世保市の4億円の交付金効果で1992年の開業後、初めて黒字化した。
 HISは2010年10月期連結決算を発表し、事業分野ごとの業績も開示した。テーマパーク事業は、
HTBを子会社化して以降の4〜9月の半年間のもの。HTB単体の決算とほぼ等しく、純損益も約4億円の黒字だという。
 記者会見した平林朗(あきら)HIS社長によると、HTBは前年同期に比べて客数が増えた一方で料金を下げたため、
売上高55億7千万円はほぼ横ばいだった。営業赤字は前年同期の約7億2千万円から約6億円改善したが、
黒字には届かなかった。経常損益は約6億8千万円の赤字から約11億円改善した。
平林社長は「来期(11年9月期)は営業黒字化が目標」と話した。
 HTBは決算の詳細を22日に発表する予定。
(朝日新聞 2010年12月18日9時8分)
ttp://www.asahi.com/business/update/1218/SEB201012170058.html

 

 



【コメント】
ハウステンボス株式会社2010年9月期の決算整理仕訳(の一部)


(未収再生支援交付金) 4億3500万円 /(受取再生支援交付金) 4億3500万円 

 

 

 

ハウステンボス株式会社が再生支援交付金を受け取ったときの仕訳(2011年9月期中)


(現金預金)8億7000万円 /(未収再生支援交付金) 4億3500万円 
                  (前受再生支援交付金) 4億3500万円

 

 

 

ハウステンボス株式会社の2011年9月期の決算整理仕訳(の一部)


(未収再生支援交付金) 4億3500万円 /(受取再生支援交付金) 8億7000万円
(前受再生支援交付金) 4億3500万円

 


新ハウステンボス株式会社 2010年4月6日の開始仕訳(新会社の設立)


(現金預金) 30億円 / (資本金) 15億円
                (資本準備金) 15億円

 

 

 

新ハウステンボス株式会社 2010年4月6日の事業譲受の仕訳(旧ハウステンボスからの事業譲渡)


(流動資産) 47億8700万円 / (流動負債) 18億1600万円
(固定資産) 11億9000万円   (固定負債) 32億1200万円
                    (現金預金) 9億4900万円

*決算短信の54ページに「企業結合日に受け入れた資産及び負債の額並びにその主な内訳」が書いてあり、
「流動資産 7,787百万円」とあるが、これにはエイチアイエス自身その他が出資した3,000百万円(現金預金)が
含まれているものと推定。そう考えないと貸借の差額があまりにも合わない。
実際に譲り受けた流動資産の額は7,787百万円ではなく、4,787百万円でしょう。
自分が出資した30億円を「他社から受け入れた」と表現するのはおかしいでしょう。
新ハウステンボスが旧ハウステンボスから譲り受けたテーマパーク事業の代金は9億4900万円では?(これも推測)

 

 


ハウステンボス株式会社 企業情報
ttp://www.huistenbosch.co.jp/aboutus/about.html


こちらに、「開業年月日」が1992年3月25日とありますが、この「開業」という言い方は何か微妙ですね。
「開業年月日は1992年3月25日」というのは正しいとも言えますし、間違っているような気がしないでもありません。

開業を広辞苑(第五版)で引きますとこう書いてあります。

@営業をあらたに始めること。みせびらき
A営業をしていること。開店していること。⇔閉業

上手く言えませんが、開業の「業」は、「事業」の業を指す場合もあれば「企業」の業を指す場合もあるのかなと思いました。
ハウステンボスの開業の業が事業の業であれば「開業年月日は1992年3月25日」は正しいでしょう。
しかし、ハウステンボスの開業の業が企業の業であれば「開業年月日は1992年3月25日」は間違いでしょう。
まあ一般的には開業の業は事業の業の意味合いが強いような気がしますので、
「開業年月日は1992年3月25日」で間違いとは言えないのかもしれませんが。

 

しかし、ハウステンボス株式会社の「設立日」は「2010年4月6日」が正しい日付です。
ウィキペディアには書いてある「ハウステンボス株式会社の設立日は1992年3月25日」は間違いです。
開園日が1992年3月25日というのは正しいと言えるでしょう。
設立日と言いますと、事業の運営そのものとはイコールではなく、法人としての会社を実際に設立した日のことを指します。
実務上は、会社の設立登記の申請書を法務局に提出した日になります。
現ハウステンボス株式会社の登記日は1992年3月25日ではありません。
2010年4月6日です。


事業は継続しています。
しかし企業は継続していません。

 

 


なぜハウステンボス株式会社の設立日は1992年3月25日ではなく、2010年4月6日なのか。
それは旧ハウステンボス株式会社が「100%減資」を行ったからです。
旧ハウステンボス株式会社は100%減資を行い、エイチアイエス等が新たな株主となり0から完全に新しい会社を別に設立し、
その新会社が旧ハウステンボスからテーマパーク事業の「事業譲渡」を受けました。
社名は同じですが、現在のハウステンボス株式会社は実はこの時設立した会社なのです。

旧ハウステンボス株式会社は事業譲渡の代金を新ハウステンボスから受け取り、負債の返済に充てます。
旧ハウステンボス株式会社にはテーマパーク事業は譲渡してもうありませんし、
汚い言い方かもしれませんが旧ハウステンボスにあった金目のものは全て現金に買えて負債の返済に充てていますから
旧ハウステンボスにはもう何もありません。
(債権者側から見ると、テーマパーク事業の新ハウステンボス株式会社への事業譲渡すら金目のものを現金に換えただけ、
という言い方ができます。)
旧ハウステンボスにあった全資産(テーマパーク事業もその一つ)のうち現金化できるものは全て現金化して
負債の返済に充ててしまった後は、旧ハウステンボス株式会社はある意味ペーパーカンパニー状態になります。
あとは旧ハウステンボス株式会社は清算するだけです。法務局にて清算結了登記を行います。
法人格はなくなり、旧ハウステンボス株式会社は法的にはこの世からなくなります。

 

まあそういうわけでして、現在あるハウステンボス株式会社は旧ハウステンボス株式会社とは実は完全に異なる会社なのです。
社名は同じじゃないかとか、今もハウステンボスというテーマパークは通常通り営業しているじゃないか、と言われても困ります。

 

 


現ハウステンボス株式会社の株主はエイチ・アイ・エス(議決権は66.66パーセント、ぴったり3分の2)が筆頭株主ですが、
他には西日本鉄道、九州電力、九電工、西部ガス、九州旅客鉄道が株主となっています。

こちらに、ハウステンボスのオフィシャルスポンサーが書かれています↓。

 

オフィシャルスポンサー
ttp://www.huistenbosch.co.jp/aboutus/sponsored.html

 

コカ・コーラウエスト、ヤマト運輸、キリンビール、アサヒビール、UCC上島珈琲。
錚々たる顔ぶれです。
しかし、一人大切なオフィシャルスポンサーが抜けています。
一番大切なオフィシャルスポンサー、それは「佐世保市」です。

 

 



現在のハウステンボス株式会社は、エイチアイエス、西日本鉄道、九州電力、九電工、西部ガス、九州旅客鉄道の6社が
共同で出資してゼロから完全に新しく設立した会社です。
株主はこの6社のみです。
現在のハウステンボス株式会社は旧ハウステンボス株式会社とは全く関係ありませんから、
現在のハウステンボス株式会社の株主の中に旧ハウステンボス株式会社の株主は一人もいません。

 

エイチアイエス、西日本鉄道、九州電力、九電工、西部ガス、九州旅客鉄道の6社は新しくハウステンボス株式会社の
株主になったわけですが、これは旧ハウステンボス株式会社が「第三者割当増資」を行ったわけではありません。
これは「第三者割当増資」ではありません。
「第三者割当増資」という場合は、継続している企業が増資を行う際に、既存株主以外の特定の第三者に新株式を割り当てて
増資を行うことを指します。
旧ハウステンボス株式会社は継続しません(清算が前提です)し、既存株主が一人もいません。
それに、ゼロから完全に新しい会社を設立するわけですから、「増資」ではないでしょう。
これはただの会社設立時の「払い込み資本」でしょう。「増資」とは呼びません。
「第三者割当増資」という言葉は間違っているわけです。
100%減資を行って新たな株主が新会社を設立する場合は、裁判所の管理の下、例えば、


○第三者割当による新株式発行(ここでの第三者とは旧ハウステンボス株式会社の株主ではない、という意味)
○新株式を支援企業に引き受けてもらう(支援企業とはエイチアイエスから見た場合のその他5社のこと。エイチ社も支援企業ですが)
○同業の大手企業が100%出資する(新会社に事業譲渡を行い、同業の大手企業が100%子会社として同事業の経営を行う、という意味)


といった表現になるかと思います。
100%減資の場合は、旧ハウステンボス株式会社は企業再生の主体ではないのです。
英語の勉強ではありませんが、旧ハウステンボス株式会社は全て受動態です。
能動態なのは裁判所や支援企業なのです。
旧ハウステンボス株式会社は清算が前提ですから受け身になります。能動的に動けるのは裁判所や支援企業(新株主)だけです。
新会社設立による「払い込み資本」は、「増資」という概念とは異なります。

 

 



新ハウステンボス株式会社からのプレスリリースを読みます(2010年4月6日発表)と、
「増資払い込み完了」とか「30億円の増資払込」といった文字が書いてありますが、
厳密に言えばこれはまちがいでしょう。
設立時に払込資本の払い込みを行っただけであり、「増資」はしていないのですから。

 

 


今までに2度も紹介していますコーポレートファイナンスの教科書にも、100%減資の後第三者割当増資を行う、
といったことが書かれています。
しかしやはりそれは間違いであるように思いますので、ここで訂正したいと思います。

 

「日本のコーポレートファイナンス」


236ページ (脚注82)に「第三者割当増資の引き受け先が必要となる」の部分が間違い。)
(スキャン)

237ページ
(スキャン)

238ページ (「ジャスコが増資を引き受け」が間違い。)
(スキャン)

 

 



記事やプレスリリースから作成したハウステンボス株式会社の推測財務諸表です。

 


ハウステンボス株式会社 2010年9月期連結損益計算書(4〜9月の変則決算)
(損益計算書)


ハウステンボス株式会社 2010年9月期貸借対照表(4月6日→4月6日→9月30日)
(貸借対照表)

 

 


ハウステンボス株式会社の取締役や監査役についてはこちら↓。
(「更生会社ハウステンボス株式会社」とは所謂旧ハウステンボス。
現在のハウステンボス株式会社とは社名や所在地は同じですが実は異なります。)

 

2010年3月26日
更生会社ハウステンボス株式会社
更生計画変更計画の認可決定および新役員等の就任について
ttp://www.huistenbosch.co.jp/aboutus/pdf/100326_htb40.pdf

 

 

 


更生会社株式会社日本航空が行わなければならないのはこちら(増資という言葉は間違いですが)↓。

 

2010年4月6日
更生会社ハウステンボス株式会社
増資払い込み完了
及び自己株式の無償取得と全部消却について
ttp://www.huistenbosch.co.jp/aboutus/pdf/100406_htb02.pdf


2010.11.30 更生会社株式会社日本航空 更生計画の認可決定について
ttp://www.jal.co.jp/other/info2010_1130.html